●大村浩一 ビジュアル詩「ターミナル -始まりと終わり-」




Terminal


-始まりと終わり-



ここでラシーヌは死んだ。ここでラシーヌは死んだ。
野村喜和夫『風の配分』34





始まりと終わり
始まりと終わり
知りたいことはそれだけ




終着駅の明かり窓
支えている鉄柱
6月の雨が降り
ホームの下の暗がり
あるいは狭い自転車だらけの裏道
煙草の吸い殻が散らばり
ひとが居て
ここから去っていき
あるいはどこにも行けなくなった
物語 の




始まりと終わり
始まりと終わり
ひとが求め
祈ったもの
6月の雨のなかに
残されたもの
それがこのあと夏の陽射しを
どう受け入れていくのか




始まりと終わり
始まりと終わり
請うもの願われたもの
それがどう果たされ
次にどう裏切られていったか
興味ある事はそれだけ




はなしの筋道を辿れば
節目ごとの出来事と
もしも にばかり囚われてしまうから
始まりと終わり
その朝その夜に
哀しい目がなにを見ようとしたか
覚えておきたい事はそれだけ
丸く見えるはいいろそらに
あいあいと続いていく
始まりと終わり
始まりと終わり
6月の雨が降り
それが屋根を
葉を
鳴らす音が
あたりいちめんに響いて


初出 2000/06/14
塩谷風月CD「声の同人誌」2号 収録

写真は2004年夏、来春に廃線となる日立電鉄。友人の西口さんと見に行きました。電車は元・営団丸の内線のものです。
『TERMINAL』は静岡鉄道の新静岡駅がモデルですが、奥主さんと歩いた高架化前の西武線の駅のようでもあります。
「始まりと終わり」は撃墜王ガーランドの自伝小説の題名から。
当作品はあちこちで朗読したので、ご記憶の方も居るのではと思います。
 

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