ダイソープチ電車から500円でHOゲージ動力車をつくる方法

 

ダイソー「プチ電車」。たった100円でモーター付き動力車が買える、庶民の味方のトイ・トレイン。この用品を何とか模型に使えないかと考える人たちから、人形の転用とか高架橋をNゲージに転用などがネットで紹介されていますが、まだまだ甘いッ!

ダイソープチ電車は殆どそのままで、HOゲージの動力車に化けるのです。1両あたり正味たったの500円で、しかも電池でも走れるハイブリッド。その方法を以下にご紹介します。

要するに鉄の車輪に変えて集電ブラシを付けるだけです。

なお当然ながらメーカー保証はありません。(笑)自己責任で改造して下さい。壊れたら100円なんだからまた買って下さい。

…って対応が全く駒吉機関車並みだなァ。

 

★用意する材料

〇ダイソー電車(中間動力車) ※作業失敗に備えて2両買った方が良いです

〇エンドウ製10.5mmφプレーン車輪(圧入タイプ)1組(4個入り600円程度、うち2個を使います)

 ※ネジ込みタイプは車軸が太いのでギヤが入らず、駆動側には使えません。

※後日分解整備したい方は、さらに700円ほど掛かりますが、非駆動側にネジ込み式10.5mmφプレーン車輪をお使い下さい。

(作例では日光モデル製を使用)

0.1mm厚リン青銅板(ラジオ部品店や大きなホームセンターで買えます。マルツパーツ館や千石電商で通販もあり、同店のHPを参照)

〇リード線少々(太さ10スケア程度、20cm位あれば十分)

2mmφ×6mm皿木ネジ(ホームセンターで買える最も小さなタッビングビス)1袋〈4本以上)

〇ヤニ入りハンダ(電子工作用)

〇釣り用のおもり(薄い鉛板)1巻、またはタミヤ製ミニ四駆用バラスト1セット

〇ポマードか、ミニ四駆用のグリス

3mmベニヤの切れ端(車輪を組み付ける時に使用)

〇試運転用にHOゲージのレール

(有井のプラモデルD51に同梱のものが円形に組めるものでは最安価です。アルミ箔を貼れば通電も可能)

 

★必要な工具

ピンセット/カッター/ブラスドライバー(台車分解用)/セットドライバー(5本組程度)/ニッパー/ラジオペンチ(先細)/電工ペンチ/3本組ヤスリ/はんだゴテ(30W程度)/金槌/金切り鋏/1.6mmφドリル/ピンバイス(ドリルを手回しする工具です)/車軸を抜くプーラー(木で自作できます。後述)/定盤(手鏡かガラス板で足ります)/バックゲージ測定用治具(木片で自作可)か、できればノギス/できれば小さな万力

 

★プーラーについて

自作プーラーの外観

 木片を使って、こんな感じのものを作ります。要は車軸を叩いて下に抜ける様にすれば良いのです。

なお一部の鉄道模型専門店では車輪専用のプーラーも販売されています。(米国製で3千円程度)加熱などしなくても車輪を楽に外せますので、今後も駆動系を自作される方、編成単位で作られる方は入手すると良いと思います。

 

 ★製作手順

(1) ギヤを入れる駆動輪を仕度します。

エンドウ製圧入プレーン車輪を用意し、片側を車軸から引き抜きます。

 抜くのは絶縁側(軸に樹脂製の絶縁ブッシュが入っている方)です。

 車輪をはんだゴテやお湯で、指では触れない程度(80100℃程度)まで熱すると膨張して簡単に外れます。

樹脂のブッシュが溶けたり割れないように注意。加熱したら前出のプーラーを使い、軸だけを金槌で叩いて車輪を抜きます。

絶縁ブッシュを無くさないように注意して下さい。

プーラーに入れた車輪

 

車輪を加熱する

 

(2) 車体や電池を外し、台車を裸にします。

(3) 駆動輪前後のフリーの車輪を外し、その車軸を台車から抜きます。

(4) 駆動輪の両方(ユルいほうがあればその側から)を抜きます。

 ※ 車軸をラジオペンチで掴んで固定し、車輪を捩じって引き抜きます。

車体をテコの支点に使わないこと。車軸のピニオンギヤを痛める恐れがあります。

(5) ユルかった側の車輪を止めていた車軸のローレット(刻み)を削り、直径を小さくします。

大きいままで引き抜くとギヤや台車の穴を痛め、不調の原因となります。

ローレットの削り位置

 

(6) 電池ボックスの脇の2本のビスをゆるめ、台車を分解します

中に減速ギヤがありますが、再利用するのでなくさないでください。

台車を分解するネジ

 

(7) ★ここからはさらに慎重に作業して下さい。

 車軸に入っているピニオンギヤを、ラジオペンチなどで慎重に引き抜きます。

 ローレットを削った側から抜きます。ギヤは側面から押すなどして、極力歯が変形しないよう気を付けて下さい。決して無理せず、じわじわと抜きます。

 (8) エンドウ車輪の鉄輪(まだ抜いてない車輪)から2mm空けた辺りの車軸に、電工ペンチで咥えて指で触れて分かる程度の深さの傷を入れます。ペンチはかなり強く握っても大丈夫ですが、足で踏んだりあまり馬鹿力だと車軸が曲がって使えなくなります。

車軸にギヤ止め用の傷をつける場所

 

(9) 車軸を進行方向右側の台車枠に差込みます。(※鉄道模型では絶縁車輪は原則左側)

この時モーターに非駆動の前輪が当たらぬ様に、モーターの樹脂を予めヤスリで削つておいて下さい。

モーターの端子はセットドライバーでゆっくりと起して鉄板から外します。金属疲労で割れると修理困難なので注意。

 前輪を避ける為に削ったモーター

ピニオン押込中。車輪と台車の隙間にプラ板を挟んだ。

 続いてピニオンギヤを車軸に入れて奥まで押し込みます。

この時に車体と車輪の間に、紙や0.3mmのプラ板をはさんで隙間を確保します。

車輪をまわしてみて重すぎず、かつ大きくガタつかない位置まで入れます。これが済むと動輪は台車枠から外れなくなります。

(10) 2段形の減速ギヤを取り付けます。

 ミニ四駆用のグリスかポマードを、ゴマ粒2つ程度塗っておくと良いです。

2段形ギヤを入れる。小さいほうが奥側。

 

(11) 台車枠を組み立て直します。モーターを取り付け、台車を2本のビスを締めます。

モーターの端子を鉄板に押し曲げてつけ直します。

(12) ここで試しに電池を入れて、動輪がモーターで回せることを確かめて下さい。

 動かない場合にはピニオンが奥過ぎる、空転するなどしているので確認してやり直して下さい。

(13) 絶縁ブッシュ付きの車輪を車軸に再圧入します。

 3mmのベニヤ板や、穴をあけた木の板などを使い、絶縁ブッシュを直接押すようにして下さい。

  万力を使うと楽です。中国製の小さな万力なら売価は2千円以下です。

(14) ノギスや治具を使い、車輪の内側の幅(バックゲージ)を測ります。

 治具は木片で作れます。残った車輪の内側にピッタリ入る幅に削り出し、いま挿入している車軸に当ててみて下さい。

 ノギスで測る場合、148mm±03mmが許容範囲です。幅が広いと脱線の原因になります。

手元にある分解していない車輪と比べて下さい。違う場合は調節して下さい。

パックゲージ測定用の治具(右)

 

(15) 前輪を1軸入れます。絶縁側は動輪と同じ、進行方向左側です。軽く回る事を確かめて下さい。

 廻らない場合、車軸の穴が小さいか曲がって開いている、黒いプラ製の台枠の嵌め合わせが悪くガニ股になっている、などが考えられます。

後者の場合、台枠を幅方向にヤスって縮めるか、先頭の車輪を撤去した穴に2mmφ☓15mm長のビスを入れて締め付け、強制的に幅を縮めます。

(作例では後者の長ネジを使って締めました)

前輪の車軸穴を広げる作業

前輪にネジ止めタイプの車輪を使う場合は、車軸を通す穴をドリルで少しずつ広げます。ピンパイスを使いドリル径を2mmから0.5mmずつ3mmまで広げ、その後は車軸を試しに入れながら丸ヤスリでじわじわ広げます。

 この時に定盤を使い、4輪が綺麗に接地するようにします。歪んでいると車輪が浮いて集電不良や脱線の原因となります。

上から指で押してガタつく場合は、反対側を削ってガタを極力減らして下さい。削りすぎた場合は、裏側に1.2mmのプラ板を貼って穴開けからやり直します。

 なお鉄道模型化の場合、外側の車軸穴は使いません。48輪の疑似ボギー車でなく2軸4輪の単車となります。

(16) 添付図面の形に集電ブラシを作ります。0.1mm厚のリン青銅板を金切り鋏でくり抜き、1.6mm穴を開け、リード線をハンダ付けします。リード線の向きに注意。

  製作中のブラシ。ケガキ線が見える

 

 リード線の方向に注意

(17) 台車にブラシの取付穴をあけます。

 ブラシの穴をガイドにして、台車中央の左右張り出し部分に1.6mmドリルで穴をあけ、2mmφ×6mmのタップビスで取り付けます。

 ブラシが車輪に当たる力が強過ぎると車輪が回りません。指で回した時に車輪が軽く回るように、ブラシの曲げ量を調節して下さい。

 組み付け中のブラシ

 

(18)リード線を電池受けの鉄片の隙間に押し込みます。(鉄片はステンレスなのでハンダが付きません)

 進行方向右側がプラスの時に前進です。リード線は赤を使います。電線の挟む前端はハンダで固めておきます。

 プラス側押し込み位置

 

 左側、絶縁車輪はマイナスです。黒いリード線は前方へ引き回し、電池受けの鉄板の裏に押し込みます。

  この鉄板への配線法のお陰で、改造後も電池で走行可能となるのです。

  マイナス側押し込み位置

 

(19) 線路に乗せて、線路からの電流で動くことを確認して下さい。電池はおもりになるので載せておきます。但しスイッチは切っておいて下さい。

(20) 自走が確認できたら、空転を防ぐために、駆動輪の後ろから連結器までの間にできるだけおもりを積みます。

連結器の首振りを邪魔しないように注意。

(21) ボディをかぶせて完成です。

※ 紙の車体を作って被せれば、静鉄や岳鉄などオリジナルの電車になります。

  静岡鉄道1000系の作例は後日改めて紹介します。

岳南電車ペーパーキットを被せた作例

 

下から見ると、軽い改造に見える。結構苦労するのに、残念。

 

【追記】

※ 調子の悪い電車から改造しようとすると、ピニオンギヤが損傷している場合があります。

この場合はレインボー社のピニオンギヤセット(81012歯)などの10歯のギヤに付け替えて下さい。

但し厚み2.7mm程度に切断しバリを削ってから使って下さい。切断加工時は一時的に不要のシャフトに嵌めるなどして、刃物の力でギヤを変形させないように十分に注意。

レインボー社のHPはこちら。通販もアリ。商品には各種樹脂ギヤのほか、ユニバーサルジョイントやゴムジョイントもあります。

http://www.powers-rainbow.com/cgi-bin/tkxcgi/shop/goods_list.cgi?CategoryID=000011