600円で作れてオモシロイ
N用スピードメーター
-指針式電池チェッカーを使った爆安電流・電圧計-
右が電流、左が電圧計。手製バクダン並みに怪しい外観。職質がコワイ。(悶)
100均で売っている100円の乾電池チェッカーを材料に、極低予算で鉄道模型運転用の
電圧・電流計をこしらえてみました。
「(自転車も)やっぱりスピードメーターあった方がいいな(笑)」と、こち亀の両さんも
語った通り、鉄道模型もメーターがあると、ガゼン楽しくなります。
また自車が見えないような大型のレイアウトでは、電流計があれば車輛の状態…という
か安否が分かって、安心できます。(脱線すれば電流がゼロになります)
そして何より、小さな模型電車に実車同様の息吹きがある事を知るのは新鮮な感動でゴ
ザマス。(笑)この感動を、ぜひ皆さんも味わって下さいまし。
なぜ「ハルロック」式に市販電池チェッカーのメーター使うのかと言うと、普通のアナ
ログ式メーターがすっごく高価だからです。表示部が4cm角ぐらいのものが1つ
3,000~4,000円、2つで8,000円。もしショートで壊したら、と考えたらとても手が出ない。
道理で市販の廉価版パワーパックには付いてない。あと一瞬の導通不良など、アナログの
ほうが捉えやすい現象もあるようです。そんなワケで今回はアナログだー。
■回路の概念図
回路と言っても、複雑なものではないです。ダイオードもトランジスタもナシ。この図の
電流計・電圧計のところに、100均の電池チェッカーをバラした奴を使うだけです。
コロンブスの卵は、出力側につけた逆転機。ホメてホメて。(笑)最初、パワーパックから
出てくる正逆する直流を、どうやってメーターに入れるか悩んだのです。ダイオードを通せば
出来るけどチョット複雑だし、順方向で電圧降下が起きるのでメーターの感度が悪くなりそうだ
とかアレコレ悩むうち、出口に逆転スイッチつける方が安い、と気がついた。普段の前後進は
こちらで切りかえれば良い、ただのスイッチひとつで済むしショートさせても全く故障しない。
おおオレって天才、と思ってしまった。(笑)
■材料
1)指針式電池チェッカー2個
※下の写真の様なタイプです。乾電池と006P(9V)両方測れるヤツ。
2)逆転用スイッチ(スライドスイッチで可、DPDT)
作例では買い置きの100円の逆転機を使いました。
3)いまお使いのパワーパックに合わせた、走行電源用延長コード1本
4)配線を中継する3足ラグ板(70円程度)
5)電線少々(12スケア以上推奨)
6)ケースとして、100均のタッパー1つ
7)2mmビス、絶縁用熱収縮チューブ、ハンダ、その他雑品
この工作ではあいにくハンダ付けが必須です。がんばって下さい。
そのほか工具としてタッパーケースを加工するためのドリル、彫刻刀などが必要です。
■つくりかた
1)乾電池チェッカーをバラします。上の写真のタイプだと、電池のプラス側に当てる
アームの軸受根本にマイナスドライバーを入れてコジると、簡単に分解できます。
抵抗は外さず、電池を当てる金具のみ外します。どこが何の端子だったか、紙にメモ
しておいて下さい。(抵抗の色帯が読めると、混乱せずに済みます。読み方はネットに
あります)
電圧計にするほうは9Vの006P電池を測定する端子を使って接続します。
電流計にするほうは1.5Vの普通の乾電池を測定する端子を使います。
バラしたメーター
2)タッパーにメーターやスイッチ、配線を通す穴をあけます。
3)両面テープでメーターを止め、ラグ板などをネジで仮止めして配置を確認します。
4)配線をハンダ付けしていきます。
スイッチ等は、ハンダ付けしてからケースにネジ止めしたほうが上手くいきます。
ケースにハンダゴテが当たると溶けてしまうので、順序を工夫して作業します。
説明がカンタン過ぎますが、この程度で終わりです、ごカンベン。念のためケースの中の
写真を掲示します。写真左側が入力、右の逆転機を通して上方へ出力しています。
なお作例では、本格的な電流計を外付けするための切り替えスイッチと外部への配線をつけ
てあります。パワーパックの入出力はKATO・TOMIXの両方のコネクターを並列に用意してあり、
つまりメーカー間のパワー配線の変換アダプター機能ももっています。(笑)
■おマケ:算数で定格電流を確認
さて、ここからは電気に興味のある方へだけのオマケです。遊びたい方はパスして
もぉドンドン遊んで下さい。(笑)
この乾電池チェッカー利用の電流計が、果たしてどの位の電流値まで耐えられるか、
念の為に計算で検証してみます。
今回の電流計の回路図です。点線の中が電池チェッカーから取り出した回路です。(電圧
計としてはもともと9Vまで測れる仕様なので、今回検証から省きました)
電流計自体の抵抗値はテスターを当てて測った200Ωという値を置きます。
右側のMは運用時に繋がっている、レール上の機関車のモーターです。抵抗値は電圧・
電流の実測値から勘案して40Ωとします。
パワーパックは0~12Vの直流電圧を供給します。
■1 まず準備として、A-B間の合成抵抗を計算します。
下側の、電流計とこれを挟む2個の10Ω抵抗を足し算すると220Ω。
上側のバイパス抵抗は2.1Ω。
並列抵抗の計算で、ここの合成抵抗は2.08Ωとなります。数式はヨソでも分かるので割愛。
抵抗値の差が大きいので、合成抵抗は殆ど、低いほうのバイパス抵抗の値になります。
電流の殆どはこちらに流れる事が窺えます。
■2 次に運転の常用域、パワーパックから6Vを供給する時の電流値を見てみます。
この6VはA-D間にかかります。
モーターを含めた合成抵抗は42.08Ω。
全体を流れる電流はオームの法則 I=E/Rから
6÷42.08=0.1426A、142.6mA(mはミリ、1000分の1の意味です)
次にモーター40Ωだけにかかる電圧を計算すると、
IR=E ですから 0.1426☓40Ω=5.704V
するとA-B間にかかる残りの電圧は
6-5.704=0.296V となります。
これがCのバイパス抵抗と、下側の電流計+10Ω2コの列に同様にかかります。
並列に繋いであるので。
バイパス抵抗の側に流れる電流値はこの時、I=E/Rから
0.296÷2.1=0.1409A 140.9mA となります。
■3 ここで今回心配なのは、殆どの電流が通るこのCのバイパス抵抗の定格電力です。安物の
電池チェッカーなので、安い1/4W品を使っています。つまり0.25Wしか耐えられない。過熱
するとキケン(汗)なので、計算してみます。
6Vでモーター40Ωの場合には電力は電流と電圧の積、W=I☓Eから
0.1409☓0.296=0.041W となります。
ああ良かった。この程度なら全く安全です。
ちなみに一般には、常用域での消費電力は定格の半分以下にすべし、とされているようです。
また70℃以上になる場所では消費電力を抑制する必要があるとか。我が鉄道のように安物を
使う時は、こうしたリスクが要チューイ点なのよね。
■4 ここから限界の電流値を探ってみましょう。定格一杯を狙います。
電力の計算式の電圧のところに、オームの法則をハメ込んで、定格電力になる電流値を
逆算します。…つっても何だか分からないなコレじゃ。
I×E=W のEのところに、E=I☓Rをブチ込んで整理しますにゃ。
I☓(I☓R)=W
I☓I=W/R
I=√(W/R)
計算ニガ手なヒトはもう死んでると思う(汗)ので、こーいうもんだと思って下さい。
このWに定格電力を、Rに抵抗値を入れると、定格一杯となる電流値が出てきます。0.25
÷2.1と電卓で押して、最後にルートを押すと0.345と出てきます。
0.345A 345mA。これがバイパス抵抗側の電流の限界値です。
この時A-B間の電圧は、0.724Vに達しています。
電流計にはこの時、何A流れているか。220Ωの側にはオームの法則から
0.724÷220=0.00329 3.29mAの電流が流れている、と計算できます。
この2つの電流の合算値348.29mAが、電池チェッカーの定格限界時の電流値となりましょ
う。(電流計の定格電流が分かりませんが、僅か4mA弱ならまあ大丈夫)
ちなみにこの電流を流せるパワーパックの出力電圧は、モーターを含めた合成抵抗から
計算すると、IR=Eから 0.34829☓42.08=14.656V となります。
我が家のKATOのパワーパックの最大出力電圧は、無負荷で実測すると14.58V、ギリギリ
セーフセーフ(笑)。この電圧では電車はリニア並みの猛スピードなり。
つまり通常の状態でNゲージのモーター1個の動力車を走らせる分には、バイパス抵抗の
定格電力を上回る事はない訳で、概ね問題は無いと分かります。
ちなみに定格の半分だとバイパス抵抗の電流で243mA、2/3だと同288mAです。
TOMIXの大昔のパワーパック(緑色で、ダイヤルで前後進切り変える奴)は出力が最大で
300mAですから、これらも考慮すれば348mAの定格ならまあ大丈夫でしょう。
線路などでショートが起きるとさすがにマズいですが、パックの側にもブレーカーや保護
回路は付いていますし、このメーター自体が延長ケーブルを利用した結線で脱着可能なので、
万一壊れたり焼けたりしたらスパッと外してしまえば良いのです。
(余計なコトを書くと、ミニ4駆やプラレール、プチ電車の動力源である電池モーター、
マブチFA-130は定格時電流が350mAも要る電力喰い虫で、古いTOMIXパックでは微動だに
しません。この電流計では測らないほうが無難です)
■5 概ね安全と分かったので、パックと線路の間に繋いで、走らせてみましょう。
KATOやTOMIXの現行の基本モデルのパワーパックは出力電圧を変える方式なので、電圧計を
速度計に見立てて遊べます。
これに対して電流計は、負荷の大きさに応じて電流値が変わり、上り坂や増車で増えるので
ターボ車のブースト計みたいな感じです。また異変(たとえば脱線や自然解結、引っ掛かり)が
あれば変化するので、見えない区間を走っている電車の安否も、針の動きで確認できます。
皆さんも、自分の車両が走る時の息吹きを、実感してみて下さい。