地獄の分かれ道

TOMIX中古ポイント修理-

 

 中古で買ったTOMIX280Rターンアウトポイント(茶色道床の旧品)で、反位(カーブ)側への進

入時に割り込み脱線が頻発したため、分解修理と改修を試みた。

 

 この値段に釣られたワタクシ。地獄のはじまり。

 

 丸印の中が、今回問題なった新設ポイント。

 

 根本的な原因はトングレールの先端に隙間が出来やすい事で、このためレール部分とトング先

端の当たる位置に切欠きをつけ、ここに先端が完全に入るようにした。

 しかし道床付きのためトング先端付近は込み入った構造で、レールを茶色の道床から引き抜い

て加工するしかない。

 ポイントから電磁ユニットを配線基部から引いて外す。裏側の4本のビスをゆるめてガラエポ基

板を外すと、4つの部品が出てきた。

 分解する4本ビス。青は特に重要なフログ固定用。

 

 外れるのは磁石付きのロッドと、この動きをトングレールに伝えるアーム、フログの電流を切り替え

る銅板の接点と、ギャップを切り替えるスイッチの4つ。

 4個の部品が出てくる

 

 ここまではメーカー側でも修理を想定している範囲だろう。しかしここからが難しかった。

(同様の加工を考えている方は、ここ以降は自己責任でお願いする)

 

 レールをジョイナーのある側から引き抜こうとしたが、ビクともしない。ジョイナーが引っかかってい

ると考え、外そうとして絶縁ジョイナー交換用の工具で押したが効果なし。

 仕方なくジョイナーを無理やりコジ広げて剥がしてみると、丸い強固な接合点が見えた。恐らくは

放電溶接。

 トミックスのレールはステンレス鋼で出来ていると聞いていた。洋銀の錆び易さや電気抵抗、コス

ト高を嫌っての採用と思うが、通常の半田付けが出来ない難点がある。

 ポイント裏側から観察すると、ジョイナー以外にもフログ通電用のリン青銅製電極が熔接されて

おり、そのままではレールは抜けない。仕方なくこの電極のある穴に25mmφのドリルを入れ、電

極を削り壊して取り除いた。電極は後から0.2mm厚リンセイ銅板で作り直して、同じ穴に差し込ん

だ。レールと道床間の僅かな隙間に押し込めば圧着できるので、ここはむしろ簡単だった。

 矢印の先が電極穴。新電極に付け替え後。

 

 レールは糸鋸とヤスリで切り欠きを作るだけだが、分解時にフログの通電を切り替える銅板をいじ

ったら、経年劣化でフニャフニャになっていて導通不能に陥った。(汗)

 0.1mm厚リンセイ銅板をハンダ付けで裏打ちしてどうにか修理したが、今度は剛性が高すぎて

切り替えが重く、電動では動かなくなってしまった。

 剛性を落とし弾性を出すために穴を開け直したり、板の反りを調整して、ようやくポイント動作の

軽さと、フログへの導通を両立できるようになった。

  裏打ちした電極。撮影後に矢印の2つの穴を開け直した

 

 切欠きを作ったレール

 

 トングは先端で線路に密着し易くした。幅をごく僅かに広げ、遊びを少なくする。

 トングは基部のプラ製ピンを抜けば、先端側から簡単に外せる。ピンは小さいので、ピンセットで

飛ばさぬ様に注意。セットドライバーのみで脱着した方がいいかも。

(万一飛ばしても、市販の1.4mmビスなどで直せる)

 ピンを引き抜き中。フログ先端の切れ目に注目

 先端で左右をつなぐ部分を切って幅を広げ、さらに駆動部からの動作をトング先端に伝える部

分に、遊びをなくす為の ピッタリ幅のガイドを0.1mm厚リンセイ銅板で作り、瞬間接着剤で貼り付

けた。(ステンレス製で半田が付かない為) 接着剤は直線側だけにつけ、密着させたい曲線側は

貼らないようにした。

 このガイドは背の高さや幅に十分注意。高いと車輪が当たり脱線の原因になる。うまく出来るまで

作り直した。

 見えにくいが、銅色のガイドを追加してある

 

 磁石付きのロッドは若干薄すぎて、アームと当たる部分で上下にズレて遊びが増えている懸念

があった為、0.1mm厚程度のプラ板で厚みをつけてみた。(0.3mm厚を貼り現物合わせで削る) 

この改造は不要かも知れない。

 

 組み立ててみると、前述したように切り替えが固かったり、フログに導通しなかったりで、調整をく

り返す必要があった。

 固さや導通不良の原因は殆ど、フログに電流を導通する銅板の形状不良のようだ。純正部品が

使えれば問題ないかも知れないが…

 本当なら組み立ての加減で変化してはならないが、仕方がないので4本ビスのうちフログを止め

るビスの締め加減で妥協点を探す。ゆるすぎるとフログがガタつき導通が怪しくなり、きつ過ぎると

動作が固くなる。テスターも使ってフログへの導通を確認した。

 

 切替スイッチを持っていなかったので、電動動作の確認はパワーパックのDC可変出力を直接

繋いで行った。定格150mAなので、トミックスの旧パワーパックでも動かす事は出来る。健全なポ

イントならボリューム全開の7080%程度で動く筈だ。(電圧を測ってなくてごめんなさい)

 長時間電流を流したままだとコイルや接点が焼けるので、12秒でボリュームは戻す。反対側

に切り替える時は前後進を逆にすれば良い。

 

 固さが良くなったら、ロックタイトかG17少量でこのネジを仮止めする。

 なお単体の状態で良くても、レイアウトに組み付ける際に高低差などで道床が大きく捻れると、そ

れだけで導通不良が再発する場合があるので注意。

(普通の線路でも、道床が捻れてレイアウトベースのベニヤ板から浮いていると、線路の歪みで車

輪が浮き、接触不良を起こす事がある。今回実はポイントの先でこれが起こっていた

 

 こうして苦闘の末、どうにか修理に成功。

 当社の食玩ソニックを走らせると、スケール換算300kmくらいの全速力で進入しても!脱線し

なくなった。ポイントとして、本来の性能を発揮できるようになったようだ。

 

 現行製品では、トング部分は全面的に改修されて頑強な作りになっており、動作不良の心配は

ないと思われる。2,000円台の売価は車両に比べれば安、初心者ならこれを買う方がよい

 

 このワナにハマるのは、恐らく旧品の280Rターンアウトポイントを中古で買ってしまうビンボー人

だけだと思う。(笑)あれば線路配置が楽になる魅惑のポイントなので。

 製品はバラツキがあるようで、もう1個の同型ポイントはフログ先端を少し曲げ鋭く削って密着性

を高めるだけでokになった。