食玩特急
(1)-1254円で作ったソニック3両編成-
バンダイ。ガンプラでプラモデル業界を席巻する進撃の巨人。
しかし鉄道模型業界では寸詰まりのNゲージ「Bトレインショーティ」に留め、
スケール物のトミーやKATOとは大人しく棲み分けている。
…のかと思ったら、かつて公然とスケール物でケンカを仕掛けていた。
寸詰まりでないレッキとしたNゲージ。しかも大量生産の中国製食玩で。
今ではHPに載っていない「スタートレイン」シリーズ。
富士鑑定団で偶然883系ソニックを入手するまで、私は存在を知らなかった。
このシリーズ4は箱絵によると800系つばめ、787系リレーつばめ、ソニック、キハ72
系ゆふいんの森、と異様に特急王国JR九州に手厚い展開。ほかには113系東海道本線、
205系メルヘン顔京葉線、201系京阪神緩行線と7種類あったようだ。私はこの時他には
787系しか入手できなかったが。
何となくネット鉄道動画の影響下にあるような(時系列逆だろw)なかなか片寄った
ラインナップ。201系やメルヘン顔は京葉線全形式コンプリートを狙うのに好都合だし、
113系は魔改造のタネ車にはもってこいだ。私みたいな貧乏人には大変楽しめそうなシリ
ーズだが、大問題がひとつ。
先頭車しか無い。
これでは編成では走らせられない。他の大手メーカーはセット売りしかしていないソ
ニックの中間動力車が中古市場に出てくる可能性は低く、あっても安い可能性はナイ。
787系なら増結用中間車が稀に出廻るが、それも動力車ではナイ。
さらにもう一つ問題が。スタートレインは連結器が特殊なのだ。密着連結器を模した
小さなものが、しかも車体側にマウントされている。ディスプレイ用と言いつつ連結も
可能だが、この構造では急曲線を通れない。KATOの道床なしR1(248R)を最急曲線と定
めている当鉄道には入線できない。
どうするか。何のことはない。
中間車は安く自作し、先頭車2両には新たに台車へ連結器を付ければよい。
そこで当然、魔改造を決行した。
中間車は前回のJR東海パンフレットから作った313系の経験から、Nゲージでは私で
も初となる塗装済みペーパーキット体裁で紙での製作を志した。下回りは前回同様、中
古でゲタ電動力車の安い奴を入手すれば良い。
かくて8月末から9月の初旬にかけて、作業に取り掛かった。
中間車はネット上で図面を見つけられなかった。自分で楽しめれば良いので、今回は
適当に作る事にした。しかし適当と言いつつも全く基準が無いのでは困る。
ボンヤリ漂っていると自宅にたまたまあったRM誌に、かもめ885系中間車の小さな図
面を発見。ソニックは実車が現在の青塗装に変わった際に、かもめの中間車を青く塗り
増結している。ある程度の相似性は期待できるかもしれない。図面をいじっていくと、
一般的な20m車より車体が1m長いらしい事が判明した。つまりスケール通りに忠実に作
っても国鉄ゲタ電の下回りには載せられない。ここはあっさり「883系タイプ」とうそ
ぶく事にして、全長を短縮した。
フリースタイルになったからには、かもめに忠実に窓配置しても仕方がない。写真や
先頭車と見比べながら、テキトーに窓やドアを883系っぽく並べ直した。乗降ドアの細
長い窓が、かもめと反対側に開いているのは後から気がついた。
銀には塗装できないので、グレーで出来る限り近い印象になる濃度を探し、黒30%と
した。コルゲートはコーレルドローの極細線で細長い長方形で描いたが、黒100%では
強すぎるので80%まで落とし、かつ線の中は黒20%と明るくした。
車体の裾は0.5mm絞った。たとえ僅かな寸法でも光の反射で分かるので、絞ると絞ら
ないのではまるで印象が違う。これとは反対に、肩の部分は直線近似である。1mmRでも
実車では15センチになるんだから、これでもマア充分だ。
2度の作り直しで車体外寸が決まると、パンタ周りが殺風景なのが超気になった。交流
で振り子電車なんだから賑やかなのは当たり前。313系の使い残しパンタを載せただけで
は、とてもじゃないが場が持たない。
書き割り位つけようと、ネットで集めた写真と、偶然入手できたKATO787系のパンタ付
中間車(840円)の高圧機器周りを参考に作図し、さらにパンタ基部については切り紙細
工で作ってみた。結果は上々、「全て紙で手作り」と言えば許してもらえそうな
感じにはできた。横ガイシの高圧機器が未成で書き割りのままだが、後からプラ板と精密
ネジで追加する予定。
レタリングはスタートレインの箱からスキャンしてレタッチ、大体感じは出せた。手間
はかかるがこれを入れると実感味が高まって嬉しい。
紙はA4判の横目を使って下さい。厚さは米坪量174~209g/m2のマットコート紙を推奨します。
下端の黒帯は内側へ折り込みます。車体の折り目は全て裏からボールペンで筋押しして下さい。
先頭車連結面のカプラーは1.2mm厚のプラ板細工。動力車がアーノルドなので、こち
らも長柄のアーノルドカプラー(TOMIXのJC2、10個入り120円)を使い、添付図の様な
取付板を作ってはめ込むようにした。
割り切ったのは通常カプラー尻に入れるバッファースプリング。ポケットを作るのは困
難だし、既製品の台車から切り出す手もあるが、それでは予算オーバーになってしまう。
純正のプラ車輪と台車を活用するのが一番安く済む。どっちみち編成内を運転中に解結す
る事はない、ドローバー代わりだと割り切った。
ただ台車へプラ板のイモづけでは強度上不安だ。そこで0.1mmのリンセイ銅板に3.5mm
φの穴をあけ、台車とカプラー基部を下側から繋いで補強した。板厚の分だけ台車は下面
を薄く削り、銅板との接着はゼリー瞬間接着剤。
台車の加工とあわせて、床板の加工も行う。箱の裏側にある図を参考に車体を分解、ボ
ス穴をドライバーでこじれば簡単に分解できる。床板後端の連結器と胴受も挿してあるだ
けなのでドライバーで外す。後で何かに使えるかもしれないので一応とっておく。
カプラー基部の逆T字型の突起は削除。台車の当たる床板基部もカプラーの上下動を見
込んで心皿の手前まで厚さ0.5mmほど削る。段差が鋭いと、台車が首を振った時に引っか
かるかもしれないと考え、半丸ヤスリでなだらかにした。
再組み立てしようとして問題が発覚。床下機器の後端が台車基部に当たり、床板を歪め
ているのだ。台車が連結面側で浮き上がる恐れがある。指が短時間入れられる程度に熱く
したお湯(たぶん50℃程度)に、床板後半を浸して暖めてから手で曲げてみると、心持ち
歪みは弱まった。床下機器も1mm:短く削り干渉をなくした。僅かな違いだとは思えるが、
やれることをやらないと後で後悔する。
これら欠点はパチパチ組立ての玩具ベースのせいかも知れない。プラの弾性を利用して
接着剤レスにする、ということは部品の変形を認めるという訳で、精度を要求される鉄道
模型と矛盾する。低予算のせいで精度が出せなかっただけかもしれないが、この構造では
鉄コレ式に別売りパーツでの自走化は困難であろう。
台車も独特の構造で、側枠の横梁への固定が上下の両持式だ。箱状にして車輪をはめら
れる弾性を確保しているのだが、フラット型紙おむつにも似た構造でプラ部品を無理矢理
折り畳むため、折り目でプラが疲労してしまう。2、3度分解したらパキッと折れそうだ。
実は嫌な前兆が出たのでゼリ瞬で固めてしまった。
カプラー基部が固まったら、床板と台車を組み立てる。台車のピンは僅かに削り、リン
セイ銅板を入れた台車がスムーズにはまるようにする。はめ合わせたら固さを確かめる。
グラグラに自由に首が振れる位で丁度よい。
カプラーは動力車と向かい合わせて高さを揃え、ゼリー瞬間接着剤で固定。
車体を付けないのは、接着剤が固まる時に出す、白い粉汚れが車体に付かないようにす
るため。床板もかなり盛大に汚れるので、テープで保護するなどした方が良い。私は後か
ら黒マジックで塗った。
動力ユニットは完動品を使えば問題ないが、今回はKATO製のジャンクを何と300円で入
手。イヤー儲かったと思ったら初のハズレ、不動品。(汗)泣きながら分解
修理、ユニバーサルジョイント基部の破損と分かり何とか修理成功。普通なら中古可動品
の相場は1,000~1,500円が底値のようだ。但しカプラーの種類に注意すること。
車体は313系の時と同様に外して紙の車体に付け替えれば完成。出来てしまえばアバタも
エクボ、嬉しいもんです。
【支払総額】
先頭車350円☓2+中間電動車下回り300円+パンタ460円÷2+カプラー12円☓2
=合計1,254円。
KATOの黄顔5両セットは16,300円。3/5で9,780円としても何と12.8%と、この手
の魔編成の私の入手目標額、定価の50%を大きく下回る好成績。
ちなみに可動電動車を使っても2,454円、25.1%で済む勘定です。
【注記】
これを書くためにネットで改めてスタートレインを検索してみたら、何と4シリーズ32
形式も出ていたらしい事が分かった。
製品としては2002~3年頃のものらしい。入ってたお菓子食べちゃったよオイ。(悶)
当時の売価は300円。私が買ったのは350円。…実は今は入手が困難らしい。私は運が
良かったのだ。
ちなみにヤフオクの時価を見てみたら、何と5倍の1,500円。
誰が買うもんかバーカ。(悶)
【後記】
この後当社の平板レイアウトで走り込みをすると、ブ厚いプラ製車輪はバックゲージ
が不足、KATOのポイント通過時にガニマタ脱線する事が判明。ドカッと凄い音がするん
だもん。止むを得ずKATOのネジ止め台車用車輪に付け替えました。このためあと500円
かかり、総費用は1,754円、入手金額比は17.9%に低下しました。
また付け替え工事時に2号車の後方台車が遂に崩壊したため下側の横梁を撤去、無理矢
理ゼリ瞬を流して片持式に改造したらそれだけで平気だった。(汗)最初からこうすりゃ
良かった。あと後方台車付近の床下に、ミニ四駆の1.5gバラストを追加しました。